2015/9/25

寮生活から始まったテニス部の進化

高校男子テニス部監督 杉江尚紀

 私は、小学校4年生からテニスを始め、大学までずっとテニスプレーヤーとして生活をしてきました。麗澤瑞浪にも、体育教師であると同時にテニスの指導者として採用していただきました。岐阜県出身の私と麗澤瑞浪とのご縁は、中学生の頃にさかのぼります。当時の麗澤瑞浪の監督を知っていたし、テニスの強い学校だということも分かっていたので、進路の選択肢になかったわけではありません。しかし、高校時代は麗澤瑞浪の選手と3年間ライバルとして戦いました。そんな私に大学4年生の時に、前監督から「麗澤瑞浪でテニスの指導者をやらないか」と声をかけていただきました。高校時代のライバル校にお世話になることを悩んだこともありましたが、何度となく声をかけていただき、これも何かのご縁だと決意しました。

 前監督のもと、コーチとして6年、前監督の退職後から監督に就任して6年目を迎えました。今年のインターハイでは、個人戦でシングルス、ダブルスに出場させることができ、シングルスでは全国ベスト32、ダブルスでは全国ベスト16の戦績を残せました。また、9月27日から行われる「2015紀の国わかやま国体」には、岐阜県の第1代表、第2代表ともに麗澤瑞浪の生徒が獲得し、単独チームで試合に臨むことになりました。

 本校には、中学時代から全国を舞台に活躍しているエースはいません。選手全員が、日々、地道な練習を積み重ね、全国への切符をつかんでいます。監督として選手を指導する中で、「あと一歩足りないもの」「補いきれないもの」を常に抱えてきました。選手一人ひとりは、まじめに練習に励んでいます。しかし、私が求めるチームの一員としての自覚や意識が十分に育て切れていないと感じていました。部活で過ごす時間は十分に共有している、もっと強くなるためには、それ以外の時間に鍵があると常々感じていました。

 本校は全校生徒の約6割が寮生活をしています。その中で、剣道部と野球部は「部活寮」として、同一集団で寝食を共にしています。特に剣道部はこの体制で6回の日本一に輝くなど、成果をあげてきました。そこで、テニス部の寮を作ることを相談したところ、「やってみるか」と言っていただき、校長先生や教頭先生、寮の先生方の協力もあり、今年の1月からテニス部寮を立ち上げることになりました。
 私がテニス部寮で一番変えたかったことは、「テニスに対する『志』に一体感を持つこと」「選手として正しい生活習慣を身につけること」でした。選手全員が「全国大会に行きたい」とは言っていましたが、一体感が感じられない、また、全国大会に行きたい選手の生活習慣ではないことに違和感がありました。強い選手は生活習慣がきっちりしています。そこで、寮生活を通して部屋の整理整頓、掃除の徹底に始まり、用具の管理と準備、起床や消灯など時間のコントロールを、一から鍛え直すことにしました。

 部活寮をスタートさせて約9ヵ月。顔つき、態度を見ていて十分な手応えを感じています。テニスの悩みを共有し、教え合いができる。各自が自分の役割を果たし、仲間のミスをカバーできるような集団となりました。チームとしての結束力は、確実に高まってきました。寝食を共にすることで、お互いに深く理解し合える関係性が築かれてきました。遠征先での食事の様子を見ていても、以前は黙々と食べていた選手たちが、楽しく会話をしながら食事をするようになりました。厳しい戦いの中にも、仲間とリラックスする時間が持てるようになったのです。

 監督である私自身にも気づきがありました。最大の学びは、生徒を包み込み、すべてを受け入れ、許せる範囲が大きくなったことでした。私は、ハングリーに勝利を追い求め、選手として活動してきた時間が長かった分、選手に求める理想も高く、厳しい指導をモットーとしてきました。これに間違いがあるとは思いません。しかし、1階に私たち教員の家族が居住し、2階・3階に生徒が居住するという麗澤瑞浪の寮生活の環境が、私の監督としての器をさらに大きくしてくれたと感じています。私自身にも子供が生まれ家族が増えましたが、私の家族と選手の付き合いが深まるにつれ、麗澤瑞浪の師弟同学という考え方が次第に分かるようになってきました。
 寮生活は、一見、厳しいように感じる人も多いかも知れません。しかし、実際に生活をする身となれば、厳しさだけではない、深くて温かな世界を強く感じることができます。私自身は、寮生活の経験者ではありませんが、テニス部寮を立ち上げる勇気を与えてくれ、寮生活で人が育つ可能性を教えてくれたのは、紛れもなく私が関わった寮生たちです。
 ここ数年、全国大会に出場はしているものの、団体戦では県で勝ちきれず十分な成果を残すことができていません。寮の立ち上げに携わっていただいた方々に感謝し、団体で勝てるチーム、常勝チームを築き上げていきたいと思っています。

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